大阪地方裁判所 昭和26年(ワ)733号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事實)
原告は被告よりいわし油ドラム罐入二十本を一本二万一千円、容器は返送するとの約定で買受け、二十一万円を前渡したが、被告は二本を納入しただけで残余の履行をしないので、原告は残余の部分について契約を解除し前渡金より納入済の二本分代金と容器の返還不能による損害金を控除した残金十五万四千五百円の返還を請求した。
原告は、被告は右請求に対しその返還を約したとして支払を求める。
被告は、本件売買当時被告は川村作雄より買受けて納入すべく原告より受領した金員を同人に交付し、その後原告より返還請求を受けたので川村より返金を受けたなら返還すると約したのであり、また売買当時いわし油には移動と価格が統制されていたからこれに違反してなされた売買契約の前渡金は不法原因給付であると抗争する。
(判斷)
原告勝訴。判決は被告が無条件に残金の返還を約したことを認めた上原告の交付した金員は不法原因給付でないとして次のように判断した。
「つぎに被告は原告の交付した金二十一万円は不法原因給付であると抗弁するが、民法第七百八条の不法原因というのは、倫理思想に根ざす公序良俗に違反する場合、すなわち社会的妥当性を欠く醜悪な場合を指し、単にその時における国家の政策的立場よりする強行法規に違反するだけの場合はこれに含まれないものと解するのが相当であり、本件いわし油の取引が当時の統制法規に違反したからといつて、平時の社会においては普通の商取引であつて、倫理思想にそむき、社会的妥当性を欠く醜悪なものといえないから、原告の本件前渡代金の交付は、右法条にいう不法な原因のための給付に該当しないものといわねばならない。けだし、第七百八条は民法第九十条と竝ぶものであつて、第九十条が法律行為を全体として観察し社会的妥当性を欠くときにこれを無効としているのに対し、第七百八条は給付を観察し、給付者がその給付をなすことによつて倫理思想に反し、社会的妥当性に欠くる事情の生ずるときだけ、その囘復を阻止することを規定しているものであるからである。」